日々、是レ、気ママニ育児ト育自。

モットーは『何とかなる』。スカパラライブに行ける日は来るのか!?
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--/--/--(--) --:--:-- | スポンサー広告 | Trackback(-) Comment(-)
『金木犀の人』 episode23
穏やかな日々を過ごしていた。


そして2000年も終わろうとしていた年末のこと。


どういう話からかは忘れたが、正月にヤクがウチの実家に来ることになった。
実はわたしはそれまで一度も『彼』を家に連れて行ったことがなかった。
なので、我が家では一大事件だった。
母の第一声は「あんた、結婚するの?」だった。
ヤクが実家に来るという大事件で、ちょっとゴタついた。


ヤク滞在中の出来事は大したことがないので、ここでは省略するが、
まあ、終わってみればまずまずだった。


ウチの親、ヤク、そしてわたし、みんなが
すぐではないにしろ、わたしたちが結婚するであろう、そういう認識を持った。
そういう意味では「大した」ことだった。




正月も明け、またいつもの日常が始まり、1月も後半。
わたしの誕生日がやってきた。


バイトから帰り、いつものように夕飯を作り、ヤクの帰りを待ち
それから二人で夕食。
片付けも終わって、のんびりテレビを見てるときだった。


ヤク 「KAZU、ちょっといい?」
わたし「うん?なあに?」


ヤクの方を振り返ると、ヤクは片手に小さな箱を持っていた。


ヤク 「はい。これ誕生日プレゼント」
わたし「・・・あ!ありがとう!!」


実は自分でも誕生日と言うことを忘れていた。
早速開けてみると、中には指輪が入っていた。


わたし「これ・・・・・。」


その指輪には小さかったけど、光る石がついていた。
ダイアモンドだった。
まるで、エンゲージリングのようだった。


わたしが言葉を失っていると、ヤクは黙ってその指輪を取り出し
わたしの左手の薬指にそっとはめた。


ヤクを見ると、ただ優しく笑っていた。
涙がこぼれた。
嬉しくて胸がいっぱいだった。


(あぁ。この人と一緒に生きていきたい。)


この頃が一番、二人の気持ちがぴったり揃っていた時期だった。
このままでいられたら。。。
しかし、なぜ、人の気持ちはずっと同じではいられないのだろうか。
スポンサーサイト
『金木犀の人』 episode22
会場は予想以上に混んでいた。
そのため、一人当たりの面接時間が短くなったと思われた。


自分の番になり、面接はあっさり終わった。
たぶん5分くらい。
長くても10分は無かったと思う。


(こんなもんかー。。)
緊張して損した。


そのくらいあっけなかった。


大した内容も聞かれず、あんな面接で、この人数。
実は、選ぶ方法はあみだくじじゃないか?
そんな風に思えた。


わたしはくじ運が悪い。(落ちたな。)


ところが。
なんと、数日後、採用の電話が来た。
微妙な心境だった。
半分諦めていたので、やる気も下がり気味だった。
でも、まあ。
働かなきゃならないわけなので断るわけはなく、次の週からバイトが始まることになった。


バイト先は隣駅のN駅近くのショッピングセンターに入っている100円ショップだった。
まだ、オープン前なので、店の設営から入った。
初日、ほとんどのメンバーが揃っていた。
たしか12、3名で全員女性だった。
そのうち、フリーターは5名。
他は学生だった。


バイトが始まり、何日かするとみんな仲良くなった。


(やっぱりオープニングスタッフでよかった。)

その中でも、一つ年下のミホと言う子と特に仲が良くなった。
今でも付き合いがある。


フリーターはみんな平日昼メインでシフトに入り、夕方や土日は学生が入る。
そんな感じだったので、わたしは土曜日は必ず休みにした。
販売でも、このバイト先なら、土日休みのヤクとも合わせることができた。


働くようになり、友達もできたわたしはだんだんと元気を取り戻していった。
ヤクとも順調で、何もかもが落ち着き始めた。


絵を描く時間は少なくなったが、それでも時々は描いていて、
心身ともに健やかだった。
『金木犀の人』 episode21
2000年の秋。
シドニーオリンピックで、マラソンの高橋尚子が一躍時の人となり、
hitomiのLOVE2000が流行った。


そんな頃、わたしはひたすらバイト探しに明け暮れていた。
アパレルのバイトを辞めてから一年以上経っていた。
さすがに、貯金も底をつきそうで、わたしは何が何でも働かなくてはならない状況だった。



新聞広告に入っていた求人を見ていると、『オープニングスタッフ』の文字に目が止まった。


(オープニングスタッフか。。良いかも。)

ヤクと知り合った、かつてのバイト先もオープニングスタッフだった。
ヤクに話してみると、
「良いんじゃない。受けるだけ受けてみなよ。」と言ってくれた。


(受けてみようかな。)


それからすぐに電話をかけた。
無職になってから、行動に移したのは初めてだった。


一週間後に合同面接会があり、わたしは面接に向かった。


ヤクが送ってくれたのだが、着くまで心臓が破裂しそうなくらい緊張していた。


この一年、他人とほとんど話したことがない。
そんなわたしが、面接でちゃんと話ができるだろうか。


不安と緊張で吐き気がした。


まもなくして、面接会場に到着した。


ヤク 「がんばってね!」
わたし「う、うん。。」

緊張でひきつった笑顔しかできなかった。


わたしは面接会場のドアを開け、中に入った。
『金木犀の人』 episode20
わたしは子供の頃から絵を描くのが大好きだった。

ヒマさえあればノートに落描きしてた。
ヒマじゃないはずの授業中もだったけど。
漫画家になりたいと思ったこともある。


そういうわたしなので、パソコンに慣れてくると、とにかく描きまくった。

スケッチブックに下描きして、スキャナで取り込み、
それを元に描いていった。
何時間でも続けられた。

一文にもならない、単なる趣味を、毎日毎日描き続けた。


すると、どうだろうか。

『やる気』というか、『活力』というか、
自分がちゃんと生きているんだと言う実感が戻り始めたのだ。


それまでは、生きてるのか死んでるのか、正直どちらでも良いような気がしていた。


それが、絵を描き始めてからは違った。


(あぁ。。わたし、まだちゃんと血が流れてるんだ)
そう感じた。


(仕事、しよ。。)
そう思い始めたのもこの頃からだった。


いきなり正社員は無理だと思い、とにかくバイトを探し事にした。


惰性で情報誌をめくっていたあの時とは、明らかにわたしは違っていた。


とにかく働こう。
そう決意していた。
ブレイクタイム#1
昨日、ガチャピンがマンガを買ってきた。


あ、我が家は二人ともマンガ好きだ。


買ってきたのは『宇宙兄弟』

人気あるみたいだけど、ぜんぜん知らなかった。

たまたま、一昨日見てたテレビで知って、さっそく買って来たのだ。


おもしろいし、泣ける~!!

しかもなぜかガチャピンとムックが出てきた(笑)
それはどうでも良いことだけど。


星が見たくなった。
こんな街から見る星じゃなくてさ。
『金木犀の人』 episode19
ヤクは趣味で自分のホームページを作り始めた。


彼は音楽と車が趣味だった。
学生時代はバンドサークルでギターをやっていた。
好きなジャンルはヘビメタやデスメタ。
車は当時はキューブ乗っていて、地味に改造していた。

なので、ホームページの内容はそういう趣味のことだった。


ある日ヤクがわたしに
「KAZUもホームページやれば?おもしろいよ」
と言ってきた。


わたし「わたし、作り方わかんないよ。」
ヤク 「簡単だよ。教えてやるよ。」
わたし「う~ん。。でも載せるような内容無いよ?」
ヤク 「KAZUが描いたイラストがあるじゃん。」

そうは言われても、わたしが描いた絵なんて。。。

ヤク 「すげーうまく描けてるから、誰にも見せないのはもったいないよ!!」


たしかに、このままでは誰に見せるわけでもなく
ただ自分の自己満足で終わる。
今のようにブログやmixiがあれば、そこで披露もできたが、
この頃はまだ流行ってはいなかった。


とりあえず、ヤクのホームページにわたしのギャラリーのページを作ってもらい
そこでアップしていくことになった。

ギャラリーの説明のコメントは
『ヤクの大切な人であるKAZUが描いたイラストのギャラリーです』
と付けてくれた。


『大切な人』という言葉が、涙が出るほどうれしかった。


無職だし、病んでるし、こんなわたし、存在価値なんて無いんじゃないか、
たびたびそう感じていた。
でも、ヤクはわたしが仕事を探さなくても、極端に堕ちているときも
常に変わらずに隣にいてくれた。

ヤクの存在だけがわたしの生きている意味だった。
ヤクがいなくなったら、わたしは生きていけない。
そう思っていた。
それほどまでに、わたしはヤクに依存していたのだと思う。
『金木犀の人』 episode18
精神的にだいぶ安定はしてきたが、やはりまだ外に出るのは厳しかった。

友達にさえ会いたくなかった。


自分がそんな状態だと言うことは、ヤク以外は知らなかった。


なので、バイト仲間だった友達がわたしたちを飲みに誘ってくれたりしたのだが、
わたしは断固として行かなかった。


今までの友達には会えなかったが、病んでから知り合った人には時々会っていた。


その人はヤクと同じ会社で事務をしている、須加さんと言う女性だった。
当時わたしは23歳、須加さんは確か34歳だった。

初めて会ったのは、ヤクと3人で、飲みに行ったときだ。


お酒が大好きな人で、その時も浴びるほど飲んだ。


話のネタはたいてい恋愛観だった。
わたしと須加さんは割と似ていて、ヤクはいつも批判の対象だった。


こうして、須加さんとは時々飲んだり、家に遊びに行ったりした。


ヤク以外の人と話す数少ない機会だった。
『金木犀の人』 episode17
とりあえず、できる範囲で規則正しい生活をしていくことにした。


朝はヤクと同じ時間に起きる。
三食食べる。
一日一度は外に出る。
気分の悪い日はもちろん無理はしない。
そんな感じで生活のリズムを整えていった。


昼間は掃除、洗濯をした。
それでも時間を持て余してしまう。
何もしていないと、堕ちてしまうので気を紛らわせるために
編み物やパソコンをするようになった。


編み物はもともと好きだったので、マフラーや手袋、ニット帽、ルームシューズなど
小物をいくつも作った。

パソコンはヤクのものだった。
使い方もわからなかったが、ヤクにある程度教えてもらい
あとは自分でいろいろ試した。


ヤクはパソコン好きで、いろんなソフトを持っていた。
その中でわたしが一番使ったのは、お絵かきソフトだ。
ペンタブレットも持っていたので、それを使って絵を描いた。
ピーク時は、2~3日のペースで一作品くらい描いた。


夕方になると、夕飯の買い物に出た。
食費としてヤクから月2万預かっていた。
それで、やりくりすることになった。


スーパー、八百屋、魚屋を周り、最安値を探して買い物した。


こうして、それなりのリズムで生活を始めたわたしは
少しずつ平常を取り戻していった。


それでも、まだ仕事を探すまでには至らなかった。
『金木犀の人』 episode16
明らかにわたしは変だった。
それはヤクにもわかっていた。


ある日、ヤクが
「KAZU、病院行ってみたら?」
と言った。


わたし「病院?別に体調悪くないけど…?」
ヤク 「そうじゃなくてさ……」


ヤクが何を言いたいのか、わかっていた。
ヤクの言う病院はつまり精神科、だ。


精神科という看板はわたしには受け入れ難かった。
なので、心療内科と言うところへ行くことにした。

行くまでものすごい緊張した。
「自分は異常です」と公言しに行くようで、つらかった。


しかし、実際は違った。
受付も診察室も、ふつうの内科と変わらず
先生も物腰の柔らかい人だった。

そこで、わたしはまた号泣してしまうんじゃないかと心配だったが、
意外と冷静で、先生にもまるで他人事かのように淡々と話した。
まあ、相手は医者なので、わたしがいくら平静を装ってても、見破っていただろうけど。


診察結果は、『自律神経失調症』『極軽度の鬱』


病院へ行ったことにより、わたしの中で何かがすっきりした。
そして、しばらくは無理に社会と繋がろうとしないことにした。


わたしはバイト探しを中断して、専業主婦のような生活を送るようになった。
『金木犀の人』 episode15
その夜は特に酷かった。

わたしは今でもそうだけど、寝る時間間際によく発狂する。
多分、その日に消化できずにある感情を翌日に持ち越したくないんだと思う。


もう寝る時間だった。

前回書いたように、明日に怯えていたわたしには、この時間が一番嫌いだった。


ヤクはもちろん次の日も仕事で、寝なきゃならない。
「オヤスミ」と言って、ヤクは布団に入った。
でも、わたしは眠くならない。
寝て、起きたら朝が来る。明日になる。
だから寝むりたくなかった。


電気も消してあるから、暗い部屋に一人。
暗闇に独りぼっち。。。


突然、涙があふれた。


始めはただ涙が流れ落ちるだけだったが、
そのうち嗚咽、ついには号泣となった。


さすがにヤクも起きてしまった。


ヤク 「何!?どうした?」
ヤクは突然のことで訳が分からない。


何も答えずひたすら泣き続けるわたし。


泣きながら、すぐ手元にあった求人雑誌をビリビリと破り始めた。


破ったページをぐちゃぐちゃに丸め、部屋中に投げまくった。


ヤクは呆然とわたしを見てた。


少ししてわたしが落ち着くと、
ヤク 「どうした?話してみなよ」
わたし「……。ヤクにはわからないよ」
ヤク 「そんなこと言ってないで」


結局わたしはヤクに何も話さなかった。
話せなかったのだ。
自分のこの時の悩みや不安、焦り、
すべての感情を説明する言葉が見つからなかった。


何も言わないわたしに、さすがのヤクも呆れ顔で
「もう今日はとにかく寝な」
と、疲れた口調で言って、わたしに背を向けて布団にもぐった。


その背中を見て、ますます泣けてきた。

しゃくりあげるように泣いていると、ヤクが起きあがって、ついに怒鳴った。
「いいかげんにしてくれよ!!オレは明日も仕事なんだよ!」


そのままヤクは寝て、わたしもしばらく起きていたが、泣き疲れて寝てしまっていた。


次の朝、わたしが起きるとヤクはもう出勤していた。
時計を見ると、もう昼だった。


(深夜で、あれだけ泣けば、疲れて起きれなかっただけ)
この時はそう思った。


身体的にもだんだんとおかしくなっていたのに、気づいていなかった。


それから少しして、わたしは朝が起きれず、夜眠れなくなった。
めまいや過呼吸など、少しずつ、目に見える症状が出始めた。
『金木犀の人』 episode14
だんだん、自分の家よりもヤクの家で過ごすことが多くなり始めた。

時々は自分のアパートに帰った。

それまでは行き来は電車を使っていたが、電車さえも苦痛になってきた。
たった5分なのに、周りに人がいるだけで、気持ちが悪くなる。
一人で公衆の場にいることが恐かった。

そのうちチャリで行き来するようになった。

チャリだと30分くらいかかる。
もともとチャリは好きなので、30分や1時間くらい何ともなかった。

ヤクには「ダイエットのため」と言っておいた。

心配かけたくない気持ちもあったが、自分がおかしいことを知られたくなかったからだ。


職探しは相変わらずだった。
探す気力さえ、あの頃はなかったと思う。

なぜかヤクはその件に関しては何も言わなかった。
毎日、今までと同じようにわたしに接していた。


そんなある日、たまたま気分が良かったわたしは、久しぶりに就職情報誌を買って帰った。

1ページ目からゆっくり見ていった。


結局、同じ結果だった。

働く気のない人間が、いくら探したって、目には入らないのだ。
だけど、自分ではそれに気づかず、なんで仕事が見つからないんだ?と焦るばかりだ。

そして、だんだん自分には何の価値も無いんだと、自分は何もできないんだと、墜ちていく。。


精神的に不安定なわたしは、すぐにイライラしたり
すぐに涙が出たりした。

それは夜になると顕著だった。

今日が終わって、また明日が来る。

そんな当たり前のことが、わたしにはこの世の終わりに感じられたのだ。

明日なんかいらない。
明日なんて来なくていい。

そう思った。

そして、その恐怖や苛立ちの矛先はヤクへと向かった。

別にヤクが悪い訳じゃなく、ヤクしかいなかったからだ。
『金木犀の人』 episode13
無職になってから1ヶ月くらいが経った。

(そろそろ仕事探そうかなー)
そう思い始めていた。

しかし、人間、一度立ち止まってしまうと、なかなかエンジンがかからないものだ。
特にわたしはそうゆう傾向が強かった。


就職情報誌をめくってみるものの、そこから一向に進まなかった。
初めは、買って家でじっくり探していたが、だんだん立ち読みでペラペラっと見るくらいになっていった。


(わたし、何の仕事がしたんだろう。。。)


目に付く職種は、やっぱり販売などのサービス業だった。
でも、それらに「土日休み」と言う条件はない。
ならば、と事務職を探してみても、ピンと来ない。
やったこともないし、パソコンもほとんどできない。
そんなわたしに事務職なんかできるわけもない。
そう思うと、結局、どこにも応募せず、時間だけが過ぎて行った。


もちろん、わたしは一応自分のアパートがあるので、家賃や光熱費は払わなくてはならない。
実は意外と貯蓄派だったので、その頃はまだしばらくは何とかなるくらいの余裕があった。
それもあって、どうしても本気で職探しをしていなかったんだと思う。


しかし、この状態が数ヶ月も続くと、さすがのわたしも焦ってきた。
お金の心配もあったが、それ以上に社会に取り残されてるという焦燥感が強かった。
(早く仕事探そう)
そう思えば思うほど、焦りも増す一方だった。

それに、これだけ外に出ていないと、外界へ踏み出すことに恐怖を感じていた。


(人と話すのが恐い。。。)
(人に会うのが嫌だ。。。)

だんだん、日常の買い物でスーパーへ行く以外、1人の外出を避けるようになっていった。
ヤクと一緒の時以外は、ほとんど引きこもりだった。


この頃から、わたしはだんだんおかしくなっていった。。。
『金木犀の人』 episode12
そろそろ、時間軸を進めよう。


夏が近づいてきた頃、わたしはバイトを辞めることにした。


理由はいくつかあった。
アパレルはバイトであろうと、社員であろうと、同じくらい辛かった。
この会社で社員になろうと思ったこともあったが、中を知れば知るほど
その気持ちは小さくなる一方だった。


そんなことはきっとどんな会社にいたって、同じかもしれないが
当時はまだ若かったし、社会経験もないわたしは
もっと他に良い会社があるかもしれない!!
と思い始めていたのだった。


それと、やっぱり『土日休みの仕事』にしようか悩んでいたからだ。


夏のセールが一段楽する頃を見計らって、退職することにした。
幸いにも、みんなが温かく送り出してくれた。
辞める時には、ちょっと名残惜しかった。


辞めてから1、2ヶ月くらい少しボーっとすることにした。
ちょうど、お盆の時期で、ヤクも夏休みに入った。
付き合い始めてから、初めて、二人一緒に連休で過ごした。


ヤクの夏休みが終わると、わたしは毎日昼間は家に1人。
仕事もしてないので、家事をしたり、一日中テレビを観ていた。


毎日、ヤクの帰りを待つだけ。
そんな日々の始まりだった。


あとから、わたしの人生でもっとも大きくて長い『闇』が訪れるとも知らずに
(『夏休み』だしねぇ~)
まだ、そんなのん気に考えていた。
『金木犀の人』 episode11
ケンカと言えば、挙げればキリがないほどのネタがあるが、
これから書く事も、その時は本気でキレそうになった。


わたしがバイトから帰る時のことだ。
その日は、ヤクの家に帰る日。
ヤクはもう家にいる時間だったので、「帰るよ」と電話をした。


駅からヤクのアパートまで、徒歩10分強といったところだが、
閑静な住宅街で、しかも大きな公園があって、夜は人通りが少なく
いつも、駅までチャリで迎えに来てもらっていた。


だが、その日は違った。


電車から『もうあと5分くらいで着くよ』とメールをしたら
ヤクからの返事は『今日はちょっと迎えにいけないから歩いてきて』だった。
わたしは『なんで?』と返したが、それに対して『今、手が離せない』と。
わたしは仕方なく、暗い夜道を一人歩いて帰った。


歩きながら、だんだん不安になった。


(まさか、家にいないとか?)
一瞬『浮気』と言う言葉が頭をよぎった。
気づいたら早足になっていて、アパートが見えたときには小走りだった。


部屋の電気はついていた。
(よかった。いる・・・)
ホッとしながら、玄関を開けると、ヤクが普通に部屋に居た。


ヤク 「おかえり~」
わたし「。。。ただいま」


メールで『手が離せない』と言っていたわりに、特に何かしてた感じもない。
怪しい・・・


わたし「ねぇ、なんで迎えにこれなかったの?何してたの?」
ヤク 「いや。別に何かしてたわけじゃなくてさー。。。」


と、その時だった。
ピンポーン♪
インターホンが鳴った。


(???こんな時間に何?)
わたしはそう思った。もう22時くらいだったはずだ。
ヤクがいそいそと出る。


どうやら宅配のようだった。
部屋に戻ってきたヤクに訊いた。


わたし「何が届いたの?」
ヤク 「うん、これ」


そしてわたしが見たものは。。。


なんと、エロビデオ7本だった。


ヤクはそれを待っていたのだ。
わたしはエロビデオのために、迎えに来てもらえなかったのだ!!!


信じられない。。。


わたし「なにさ!?これ!!なんでこんなもののために迎えにこれないの!?」
ヤク 「だって、着払いだったし、もう『すぐ来る』って言うからさ、出るに出れなくて(笑」


(死ね。)
ホントにそう思った。
キレそうになったが、内容があまりにバカバカしくて、怒る気力も出なかった。



ヤク 「一緒に観ようぜ♪」
わたし「・・・・・・・・・」


そのままわたしは無視して寝た。


後日、なんで7本も買ったのか尋ねたら、
欲しかったのは4本くらいだったが、7本まとめ買いだと割引になるからだそうだ。
しかし、7本観てから、ヤクはこう言った。


「良かったのは2本だけだったなーーー」


こうゆうヤツなんだ。
『金木犀の人』 episode10
わたしたちはお互いの家の合鍵を持った。
それからはたいてい交互に行ったり来たりした。
半同棲だった。


わたしは休みの日は、ほとんど家事をやっていた。
自分の家はもちろん、ヤクの家にいるときはそっちでも洗濯や掃除もやった。
食事も作った。
土日、わたしがバイトの時はヤクが夕飯を作ってくれた。


ある日、ヤクの家で掃除をしていた時のこと。
部屋の隅に枯れた観葉植物の鉢があった。
ずっと前から、その鉢があるのは知っていたたけど、どうでも良かったので
そのままにしていた。
でも、その時は(枯れてるんだし、なんで捨てないんだろう。)とやけに気になった。
勝手に捨てるわけには行かないと思い、ヤクが帰ってきてから訊く事にした。


わたし「ねぇねぇ、あの枯れてる観葉植物、何?」
ヤク 「あぁ、あれ?パキラって言うんだよ」
わたし「いや、名前じゃなくてさ。なんで枯れてるのに取って置くの?」
ヤク 「うーーーーん?別に意味はないけど・・・」
わたし「じゃあ、捨てても良い?」
ヤク 「うーーーーーーーーーーーーーん。。。」


なんかはっきりしない。
なんだ???
余計に気になってきた。


わたし「捨てちゃダメなの?なんなの?あれ」


ヤク 「・・・あれ、アイツのなんだよね。。。」


はーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?


アイツとは、元カノのことだ。


だったら、むしろ捨てても良くないか?
そう言うとヤクは
「いや、だってさ。人の物、勝手に捨てるのってなんかさ。。。」


わたしはイライラ爆発。


人には飲み会ですら文句を言うくせに、お前はなんで元カノの置いてった
しかも枯れ果てた観葉植物を大事に取っておくんだよ!?


この時が、わたしが初めて本気でキレた時かもしれない。





次のゴミの日に捨てたのは言うまでもないことだ。
『金木犀の人』 episode9
卒業後、当然親からの仕送りはなくなる。


バイト代だけではさすがにキツイので、まずは家賃の安いところへ引っ越すことにした。
だが、これがまずは難題だった。


時期も悪かった。
3月後半の部屋探しは遅いのだ。
条件のいい物件はどんどん決まってしまっていて、なかなか部屋が決まらない。
それに、フリーターだと審査が通らないことがあった。


今まで住んでいたアパートを引き払う日がどんどん近づいていた。


数軒目の不動産屋を回ったときのこと。
ヤクも一緒だった。
この時もやっぱり、なかなか決まらなかった。
精神的にちょっと追い詰められていたわたしは、不動産屋のカウンターで泣き始めた。


わたし「もういい。もう実家に帰る」
ヤク 「何言ってんだよ。部屋見つかるって」
わたし「もうやだーーー。。。」


そんなやり取りが数分続いた。
不動産屋の人はおろおろしていたが、わたしがちょっと落ち着いたところで
おもむろに一枚の見取り図を出した。


『ワンルーム K駅から徒歩3分 家賃4万』


不動産屋「ちょっと狭いですが、きれいですし、駅からも近いし、おススメですよ」
わたし 「ここにします!!」
ヤク  「ちょっとまて。まずは見てみよう」
 
 
実際見てみると、確かに狭かった。
6畳とあったが、多分5.5畳くらいだと思う。
キッチンも小さいし、ユニットバスだし、収納もほとんどないけど、
わたしにはわがままを言う余裕はなかった。


これで実家に帰らずに済む。
そう思った。


そのまま契約して、最短で引っ越すことになった。


引越しはヤクと二人でやった。
自分の荷物を運び入れると、狭い部屋はますます狭くなった。
ベッドは仕方なく捨てたけど、それでもそれ以外の家具は収まった。
最寄り駅のK駅はヤクの住むS駅と5分くらい。
バイト先へもそれまでを変わらないくらいの時間で行ける。
駅もスーパーも銀行も郵便局もコンビニも薬局もほぼ徒歩圏内。
狭い以外は何の不便もなかった。


なんだかんだで、そこには地元に帰るまでの6年間住むことになったのだ。



こうして、とりあえず、わたしの新しい生活が始まった。

『金木犀の人』 episode8
相変らずケンカの絶えない日々だった。


こんな風に書いてると、ケンカばかりでちっとも楽しくなさそうだけど
そんなことはない。
もちろん、一緒にいて笑ってることのほうが多かった。
大好きだった。




大学生活も終わりに近づいていた。
進路はと言うと、公務員試験はダメだったし、一般企業の就職も決まっていなかった。
でも、大して焦っていなかった。
次年度の公務員試験もまだ受けられるし、それにヤクと付き合い始めた頃に
始めたアルバイトがかなり楽しくなっていた。


そのバイトはアパレルの販売員。
そこの上司に「社員になれば良いよ」と言われていた。


正直悩んでいた。
実はそのアパレル会社は、就職活動中に一度受けたところで、わたしは落ちていた。
なので、そこで働けるなんて、まさに願ったり叶ったり。
それに、公務員試験の勉強もやる気がなかった。


ただ。。
販売職はもちろん土日祝は基本的に仕事だ。
そうすると、結局、前の彼女と同じ。
別にヤクを信じていなかったわけじゃないけど、一緒にいる時間が少なくなればなるほど
不安が大きくなる。
恐かった。
ヤクもやっぱり土日休みの仕事が良かったみたいで、あまり賛成はしてくれなかった。




結局、進路を決められないまま、わたしは大学を卒業した。


アパレルのバイトを継続して、卒業後はしばらくフリーターとなった。

Designed by aykm.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。